★ 新入部員獲得大作戦 前編 原作:Fujjy(38期生)
我々が最高学年となり、新一年生が入学して間もない四月中旬、我が校でクラブ紹介という行事が行われた。 そこでは体育館に集められた一年生に対し、各クラブの代表が壇上でそれぞれ自分のクラブをアピールする場が与えられるのだ。 そしてまた後日クラブ見学と称し、放課後に学級単位で順に各クラブを見学してまわる一年生への布石でもある。 ほとんどの一年生は、各クラブに触れるこれら二度の機会を参考にして入部を決めるのだ。 つまり、ぜひとも多くの一年生を獲得したいと思うクラブは、これらのチャンスに全力を尽くさねばならない。 クラブ紹介では壇上で我が部の実績を誇らしく語り、クラブ見学では汗と涙に溢れる青春時代を演じるのだ。 そしてクラブ紹介を無難に終え、クラブ見学も例年通り無難に済ます気でいる我が柔道部では・・・。
「キャプテン、今年のクラブ見学は例年通りですか?」 「そのつもりだが、何かね参謀Fujjy。」 「それではダメです!今年はぜひ多くの新入部員を獲得して、我が部を躍進させたいのです!」 「例年通りではダメなのか?」 「そうです。これまで通りの方法では地味なのです。だから入学前から柔道部に入ろうとしている者は別として、どの部に入部しようか迷っている者にはあの地味なアピールでは彼らの心を捉える事はできません。」 「地味?」 「考えてみて下さい。我が部の練習はまず、準備体操→ 柔軟運動→ 受身練習→ 寝技→ 打ち込み→ 乱取り→ 補強(筋トレ)と簡単に言うとこのような流れですよね?」 「そうだな。」 「幸いにも一年生は我が柔道部から順に見学していきますが、一クラスが我が部に要する時間が約5分として10クラスだと50分です。」 「・・・」 「我が部の練習時間は90分位ですが、最初のクラスが準備体操の頃に来た場合、最後のクラスは寝技もしくは打ち込みを見学して帰ることになります。」 「・・・」 「地味とは思いませんか!練習の華である乱取りを見学もせず、地味な練習だけ見学していき柔道は地味なスポーツとレッテルを貼られ敬遠される・・・、これが入部希望者が少ないこれまでの原因だったのです!」 「ではどうしろと言うのかね。」 「今年のクラブ見学の日の練習は思い切って乱取りだけにするのです!」 「なっ、なにっ!」 「しかも事前に投げる役と投げられる役とを決めておけば、技も綺麗に決まって迫力が出ますよ!」 「しかしキミ、それはヤラセでは・・・」 「ヤラセではありません!これは仕込みというものです!」 「う〜む」 「このド迫力の乱取りを見せられたら、他の部の練習など遊びのようなもの、満員御礼間違いありません!」 「キミの熱意には負けた・・・。よし!それでいこう。」
かくして参謀Fujjyの進言で“新入部員獲得大作戦”が綿密な計画と共に実行されることとなった。
>>後編に続く
一覧に戻る 前に戻る 次に進む
|